「長い道のりの先に見つけた、自分らしい生き方」
落語絵本の挿絵に取り組んでいる土肥さんですが、実は長年ひきこもりで苦しい日々を過ごしていた経験があります。
現在、岡山県内のひきこもり当事者の家族会「たんぽぽの会」に所属しています。
先日、発足6周年の集い「当事者の語りと相談会」が開催され、土肥さんが登壇し経験談を語りました。
37年間にわたるひきこもりを経て、今は新しい道を歩んでいる土肥さんの話は聞いている人を引き込み希望が抱ける内容でした。
今回は、そのお話を紹介したいと思います。

学生時代、僕は吃音がありからかわれることが多く自信をなくしてばかりいました。
同級生がおもしろがって放送部に推薦してきて笑いものにされたことも悔しかったです。
吃音がつらく高校を辞め、精神科で3か月の入院を経験しました。退院後に始めた仕事もなかなか続かず、自動車整備や流れ作業の仕事も自分には合いませんでした。
その期間は37年。自分ではどうにもならず、ただ辛い日々でした。
それでも少しだけ「自分に合う仕事」に出会ったこともあります。荷物を台車で運ぶアルバイトの仕事は3年勤めました。
決まった作業を黙々とやるのは自分に向いていたのです。
ただ、体力的に大変だったことと人間扱いされてない感じがして、また引きこもりの生活に戻ってしまいました。
そこからの引きこもり生活が長く結果的に37年にもおよびました。
絵を描くことは昔から好きでよく描いていました。
ですが、家庭では自分の特性や好きなことをなかなか理解してもらえず苦しかったです。今でも家族に何か言われるのが嫌なので自宅で絵を描くことはありません。
そんな中、ある人から「絵を活かしてみたら?」と声をかけられ、その一言が長いひきこもり生活に光を差し込んだのです。
また同じ時期に、山陽新聞で昔ジャンプで連載されたことがある漫画家が「ありがとうファーム」にいることを知りました。
それから病院を受診し、自閉スペクトラム症と診断されたことで、支援を受けられるようになり、ありがとうファームのB型へ通所し始めます。
絵の活動を続け、今年の10月からはA型事業所にステップアップを果たしました。
「作家として独り立ちしたい」という新しい夢も生まれました。
僕は自力でひきこもりから脱したわけではないです。周りの支援があったからここまで来られました。
かつては「生きていたくない」と思うほどつらい日々でしたが、今は好きな絵に向き合っています。
ありがとうファームにはチャンスを与えてもらった。ありがとうファームと関われなかったら今でも引きこもり生活が続いていたと思います。
現在は春風亭昇吉さんという有名な落語家さんからユニバーサルデザインの絵本の挿絵に取り組んでいます。
相手の要望に合わせて絵を描くのは難しいですが、自分のできる限り頑張っています。

ここまで土肥さんが講演会でお話された内容を紹介しました。
土肥さんのお話は「一度つまずいたら終わり」ではなく、人生には何度でもやり直せるタイミングがあることを教えてくれました。
吃音や特性、生きづらさ、ひきこもり__。
どれも個人の問題ではなく、環境や周りの理解があれば持っている才能を活かし、前に進んでいけるのだということを土肥さんの歩みが示してくれています。
今、土肥さんは自分の絵の才能を活かし新たな挑戦をしています。今までは自分のアイディアで好きな絵を描いていましたが、今の依頼のお仕事は「相手の要望に則して、それに答えていく」ものです。時に頭を抱えることもありますが、一つ一つ調べて理想に近づけようと真摯に向き合っている土肥さん。
これからも土肥ヨシ通信でお伝えしていきますので、引き続き応援よろしくお願いします。





